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 終末期医療の患者さんが亡くなられました。

 在宅で最後を迎えるために、私が往診に行っていました。そのAさんが亡くなられました。
 10年くらい前にがんになり、そして全身転移し、つい最近までいろいろな治療をし、やっとここまできたところです。
 しかし、もうすること(治療)がなくなり、在宅でゆっくりと最後を送る状況になってしまいました。8月下旬から往診に行ってますが、ほぼ毎日のように約20日間ほど、亡くなるまで行きました。
 私はこの患者さんに対してなにもできず、診察に行くだけです。ご家族に診察所見を伝え、今後の見通しをお話していました。もうすでに血尿が出ており、DIC(播種性血管内凝固症候群)の兆候がありました。ところが、往診3日目に不思議なことに血尿がなくなり、すこし元気になっているかのようになりました。しかし、出血斑は少し増えていました。でもこれは小さな奇跡です。DICがありますので、いつ急変してもいい状態だったのですが、持続的な出血が止まっているからです。
 ご本人は、終末期医療の往診を2つの医療機関に断られています。わらをもつかむ状況で、「3度目の正直!」で私に往診を頼んできました。そしてはじめて往診に行ったとき、ぼくと会うと、とても笑顔で挨拶してくれました。あとで聞いた話ですが、あんなやさしい医者に早く巡り合いたかったと云っていたそうです。
 断られて一時は絶望感を味わったご本人ですが、この絶望感から開放されて、この世から旅立ってくれたと思います。